
保険の入れ歯で十分って本当?保険適用外との違いやだめだったときの解決のヒント
失った歯を治療する際、保険の入れ歯で十分だと考えていませんか?
どの治療法を選ぶべきか迷っている方もいるでしょう。
たしかに、失った歯をただ補うだけであれば保険の入れ歯でも対応できるため、わざわざ高い治療法を選ぶ必要はないと思うかもしれません。
しかし、費用の安さだけで治療法を選ぶと、さまざまな不都合が生じて後悔する可能性があります。
今回は、保険の入れ歯で大丈夫なのかどうか、問題点も踏まえてまとめました。
保険の入れ歯で十分とはいえない
結論として、保険の入れ歯で失った歯を治療すること自体は可能ですが、十分とはいえません。 「失った歯を補う」「噛める」という点だけみれば十分かのように思えるかもしれませんが、その機能や効果はあくまでも最低限です。 保険診療の入れ歯は、費用が安い分、機能性や審美性に劣ります。使い勝手や寿命を踏まえて検討すると、コストパフォーマンスに優れるとはいえません。 美しい見た目と快適な噛み心地、持ちのよさを求めているなら、自由診療もしくは入れ歯ではない治療法が選択肢となります。
保険の入れ歯では不十分な理由
保険の入れ歯はリーズナブルかつ手軽に欠損歯が治療できる一方で、次のようなデメリットが存在します。
● 快適性が低い
● フィットしにくい
● 食事がおいしく感じられない
● 悪目立ちしやすい
● 選択肢が限られる
● 周囲の歯に負担をかける
● 寿命が短い
● すぐには作り直せない
快適性が低い
入れ歯は、装着時の違和感が大きいです。
一般的に、保険の入れ歯は耐久性を補うため、内側に厚みをつけています。
分厚い入れ歯は舌の動きを妨げやすく、しゃべりにくくなったり、滑舌が悪くなったりしがちです。
違和感を完全に解消するのは難しいうえ、頻繁な調整を要します。
フィットしにくい
保険の入れ歯は、治療法や時間に制約があります。
その一例として、精密な型取りや調整はできません。
口腔内の状態は一人ひとり異なるため、保険の入れ歯をぴったり合わせることは極めて困難です。
また加齢や口腔内環境の悪化などによって歯茎の状態は変化しますが、保険の入れ歯だと柔軟な対応が難しいといえます。
食事がおいしく感じられない
入れ歯にすると、口腔内が狭くなり、ものが噛みづらくなることがあります。
味や温度を感じにくくなったり、噛んだときに痛みを感じたりして、食事がおいしくとれなくなったという声も少なくありません。
食事が楽しめないと、食欲減退につながり、QOL(生活の質)や健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
悪目立ちしやすい
保険の入れ歯は、金属部分が剥き出しになるため、悪目立ちしやすい傾向にあります。
人工歯の光沢や透明感が低く、色も不自然です。
また、入れ歯が歯茎と接する部分である義歯床には厚みがあり、口元が違和感のある印象になりやすいといえます。
選択肢が限られる
保険の入れ歯の素材は基本的に歯科用のプラスチックと金属のみであり、選択肢がほとんどありません。
素材自体の柔軟性やデザイン性も低く、一人ひとりの口腔内の状況に合わせるのは極めて困難です。
周囲の歯に負担をかける
部分入れ歯は、金属バネ製のクラスプを両隣の天然歯に引っかけて固定する仕組みです。
そのため、噛むたび周囲の歯に余計な力が加わり、負担をかけることになります。
過度な負担が続くと、歯が欠けたり、失ったりする原因になり、いずれ健康な歯を失うことになってしまうかもしれません。
寿命が短い
保険の入れ歯の寿命の目安は2〜3年程度です。
強度や耐久性が低く、些細なきっかけで破損したりすり減ったりしやすいといえます。
したがって長期間の使用は難しく、途中で不具合が生じた場合はその都度作り直しとなるため、費用負担もかさむでしょう。
すぐには作り直せない
保険の入れ歯は、原則として治療から6カ月間は作り直しができません。
噛み合わせ調整や別の箇所の治療であれば6カ月以内でも保険適用が可能ですが、それ以外のケースではすべて自費となるので注意しましょう。
そもそも入れ歯とは
次に、そもそも入れ歯とはどのような治療法なのかをおさらいしておきましょう。
入れ歯治療の概要
入れ歯とは、失った歯を補うための義歯の一種です。
部分入れ歯(パーシャルデンチャー)と総入れ歯(フルデンチャー)があり、欠損歯の本数や口腔内の状態によっていずれかが適用されます。
また入れ歯治療は保険診療と自由診療の2種類から選択でき、それぞれ入れ歯の素材や作製方法が異なります。
費用は保険適用や素材によって上下しますが、いずれの場合も自由診療のブリッジやインプラントと比べるとリーズナブルです。
入れ歯治療の流れ
一般的に、入れ歯治療は以下の流れで行われます。
1. 診察
2. 口腔内の型取り
3. 入れ歯の作製
4. 噛み合わせの調整
なお、通院回数は2〜6回程度が目安です。
入れ歯の違和感には個人差があるため、それに伴い通院回数も変わります。
また診察の結果、既存の歯や被せもの、神経などに問題がある場合は、入れ歯の前にまずその治療が必要です。
入れ歯治療の保険適用と自由診療の比較
入れ歯治療における保険診療と自由診療の違いを以下の表にまとめました。
保険の入れ歯 | 保険適用外の入れ歯 | |
値段 | 約5千〜1万5千円 | 約10万〜50万円 |
治療期間 | 数週間〜1カ月程度 | 2〜3カ月程度 |
機能性 | 悪い | よい |
審美性 | 違和感がある | 目立ちにくい |
耐久性 | 低い | 高い |
最近の入れ歯は、以前と比べ品質が向上していますが、選択肢の幅が広い保険適用外の入れ歯には及びません。
保険適用外の入れ歯は質がよい分、費用や制作期間が増える傾向にあります。
保険適用の入れ歯のメリット・デメリット
続いて、保険適用の入れ歯のメリットとデメリットを確認していきましょう。
◼︎保険の入れ歯のメリット
保険診療の入れ歯は、値段が安い点が最大のメリットです。入れ歯の本数・範囲によっても異なりますが、一般的には5,000〜15,000円程度で治療できます。また入れ歯は、治療期間が1カ月以内とほかの治療法と比べ短期です。壊れたときや不具合が生じたときは、修理が可能な点もメリットだといえます。
◼︎保険の入れ歯のデメリット
保険の入れ歯は、硬いものが噛みづらく、しばしばズレるので口腔内の不快感を覚える方が多いです。素材は歯科用のレジンと金属のみで、選択肢がほとんどありません。耐久性にも劣り、破損・変形しやすいため、数年に1回程度は作り直しが必要です。
保険適用外の入れ歯のメリット・デメリット
保険適用外の入れ歯のメリットとデメリットは以下のとおりです。
◼︎保険適用外の入れ歯のメリット
自由診療で作製した入れ歯には、以下のようにさまざまな種類があり、治療を受ける方の口腔内の状態や希望に応じて自由に選択できます。
入れ歯の種類 | 概要 |
ノンクラスプデンチャー | 金属製の固定器具(クラスプ)のないタイプの入れ歯 |
シリコン入れ歯 | 歯や歯茎に触れる部分がシリコンで覆われた構造の入れ歯 |
アタッチメント義歯 | クラスプではなく磁力で固定するアタッチメント式の入れ歯 |
いずれも保険の入れ歯より高性能であり、硬いものでも比較的しっかりと噛めます。作りが精密で薄く、オーダーメイドでしっかりフィットするため、違和感や周囲の天然歯への負担が少ないでしょう。
素材は金属のほか、シリコンやセラミックなど天然の歯や歯茎に似た素材・デザインの入れ歯が選択できます。強度も高く丈夫で、保険の入れ歯より長持ちするでしょう。
◼︎保険適用外の入れ歯のデメリット
保険適用外の入れ歯は、全額自費となるため、費用負担が大きくなります。なお治療費の相場は、約10万〜50万円です。また、保険の入れ歯より緻密な構造のため作製に時間がかかり、治療期間が2〜3カ月に渡ります。くわえて、自由診療でも、ほかの健康な歯に負担をかける点や、顎の骨が痩せるといった入れ歯全般にいえるリスクは減らせません。
保険の入れ歯でも大丈夫なケース
次の項目に当てはまる方は、失った歯の治療法として保険の入れ歯が適用できます。
- 機能性や審美性は妥協できる
- 最低限の噛む機能さえ補えればよい
- ホームケアがしっかり行える
- 現時点で健康な歯が多く残っている
同じ保険の入れ歯でも、治療する歯科医院や歯科医師によって仕上がりや快適さに大きな差が出ます。保険の入れ歯を選択する際は、入れ歯治療に関する専門的な知識・経験が豊富な歯科医師のいる歯科医院を選びましょう。
保険の入れ歯がおすすめできないケース
以下のような要望のある方は、保険の入れ歯はおすすめできません。
- しっかり噛みたい
- ズレや違和感を軽減したい
- 入れ歯であることを周囲にバレたくない
- 健康な歯が少ない
- メンテナンスを少しでも楽にしたい
- 金属アレルギーがある
自然に近い噛み心地や感触、見た目を求める方や、口腔内や手入れの負担を減らしたいなら、自費の入れ歯や、ブリッジ・インプラントが選択肢となります。
保険の入れ歯では快適に過ごせないときの対処法
保険の入れ歯を装着して強い違和感を覚える場合や、トラブルが生じたときは、次のような対処法を実践してみてください。
- 動作はゆっくり行うよう心がける
- 食べ方を工夫する
- ホームケアを徹底する
- 定期検診を受ける
- 入れ歯安定剤を使用する
- 自由診療の入れ歯に変更する
動作をゆっくり行うよう心がける
保険の入れ歯は、特に装着直後に違和感を覚えやすいことが特徴であり、慣れるまでにある程度の時間を要します。
慣れるまでは、食事や会話をゆっくり行うことを意識するとよいでしょう。
食べ方を工夫する
保険の入れ歯を使用している限り、食べにくさとは一生付き合っていかなければなりません。
違和感を減らすには、大きいものや硬いもの、粘り気の強いものは細かく刻む、両側でバランスよく噛むなど、食べ方に工夫してみてください。
ホームケアを徹底する
入れ歯全般にいえることですが、歯茎と装置の間に食べ物や歯垢が入り込みやすい傾向にあります。
不衛生な口腔内は、ほかの歯の虫歯や歯周病、口臭の元です。
入れ歯専用のブラシや洗浄剤で毎日お手入れし、清潔な状態を保つよう心がけましょう。
定期検診を受ける
時間の経過とともに、歯茎や入れ歯の状態は変化します。
定期的に検診を受け、入れ歯を調整することで、不具合や違和感が解消できるでしょう。
また予防歯科の観点からも、定期検診の受診は大切です。
残っている天然歯や歯茎、顎の骨の量をこれ以上減らさないためにも、数カ月〜半年に1回は定期検診を受けましょう。
入れ歯安定剤を使用する
保険の入れ歯をぴったり合わせるのは困難ですが、入れ歯安定剤を使用することで歯茎とのフィット感が高まります。
薬剤で固定することにより安定し、ズレにくくなるため、使い心地がよくなるでしょう。
ただ、入れ歯安定剤は口腔内環境や噛み合わせの悪化を招くため、長期間の継続使用は避けてください。
自由診療の入れ歯に変更する
保険適用の入れ歯では満足できない場合は、自由診療の入れ歯に変えることで悩みが解消するかもしれません。
オーダーメイドでデザインできるため、機能性や快適性、審美性が高められます。
ただ、上記のメリットは、あくまでも保険診療との比較です。
インプラントといったほかの治療法と比べると、機能性や審美性が十分とはいえません。
入れ歯より快適かつ目立たない治療法ならインプラントがおすすめ!
入れ歯では十分な満足感が得られないという方には「インプラント」がおすすめです。ここでは、インプラント治療の概要やメリット・デメリット、選び方について解説します。
インプラント治療とは
インプラントとは、人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込む治療法です。
顎の骨にインプラントを固定し、その上から人工歯を装着します。
◾️インプラント治療についてさらに詳しく知りたい方はこちら
入れ歯よりインプラントが優れている点
インプラントは、入れ歯より機能性や審美性に優れる治療法です。
最大のメリットといえるのは、天然歯に近い噛み心地と見た目。
歯の根っこがあるため噛む力がしっかり伝わりやすく、違和感が少ないほか、味や温度もしっかり感じられるでしょう。
また、人工歯の素材やフィクスチャー(インプラント体)の形状の種類が豊富で、希望に応じて選べます。
ホームケアも、基本的には通常のブラッシングでOKなので手軽です。
なお、失った歯の治療法には、入れ歯やインプラントのほか「ブリッジ」があります。
ブリッジとは、失った歯の両隣の歯を支柱として人工歯を固定する治療法であり、機能性・審美性ともに入れ歯とインプラントの中間的な選択肢です。
ただ、治療の際は患部の両隣の歯を削る必要があり、将来的にさまざまなリスクが生じかねません。
◾️インプラントとブリッジをより細かく比べたい方はこちら
インプラント治療の注意点
インプラント治療は、自由診療となるため入れ歯より費用が高額です。
また1回ないし2回の外科手術がある分、治療期間も長くなるほか、健康状態や体質によっては適用できません。
とはいえ、インプラントはお手入れ次第で半永久的に使用できるためコストパフォーマンスが抜群です。
そもそも、保険適用の入れ歯と比較すると高額ですが、自由診療の入れ歯とは費用負担に大きな差はありません。
また、インプラントの治療期間は長くても、通院回数は平均2.5回です。
通常の方法では適用が難しい場合でも、代替案が適用できることがあるので、不安や疑問がある方は一度インプラント専門の歯科医師に相談してみてください。
◾️インプラント治療の費用相場の詳細はこちら
インプラントが保険適用になる条件
審美性や機能性を高めることが目的のインプラント治療は、原則として自由診療です。
ただ、厚生労働省が定める以下の条件を満たす場合、インプラントでも保険が適用されることがあります。
- 先天性疾患による歯や顎骨の欠損および形成不全
- 後天的なケガ・病気およびその治療による歯や顎骨の欠損
- 歯や顎骨の欠損部分の骨移植
いずれの場合も、インプラント以外の治療法では対応できないことが前提です。
また歯や顎骨の欠損範囲は、連続する部分の3分の1以上、目安として6本以上の歯を失っていることが条件となります。
◾️インプラントの保険適用について詳しくはこちら
自身に適した治療法が入れ歯かインプラントかを見極めるポイント
失った歯の治療法として入れ歯とインプラントのどちらを選ぶか迷ったときは、以下のポイントを基準に検討してみてください。
- 治療にかけられる費用
- 義歯に求める機能
- 義歯に求める審美性
自身にとって優先度の高いことが何かを踏まえて検討することで、最適な治療法が選べます。
治療費を安く抑えることが最優先で、快適性や審美性は妥協できるのであれば、保険適用の入れ歯治療が第一選択肢となるでしょう。
対して、天然歯に遜色ない噛み心地や見た目、生活および健康の充実のためならある程度の費用がかかっても構わないという方は、インプラントが最適です。
まとめ
保険の入れ歯は、ほかの治療法と比べ費用や時間的な負担が軽いというメリットがあります。
しかし、機能性や快適性、審美性の面では十分とはいえません。
また一度の治療で支払う費用は安くても、寿命の長さや耐久性まで考慮すると、長い目でみて負担が大きくなる恐れがあります。
どれがよいとは一概にはいえませんが、自身の希望や予算を踏まえて優先順位をつけ、納得のいく治療法を選ぶことが大切です。
「これからの毎日を快適に過ごしたい」「天然歯に近い感覚を取り戻したい」という方は、インプラント治療を検討してみませんか。
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